底値を模索する金価格
- 2014/04/01
- 15:07
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2014/04/01(第13回)
底値を模索する金価格
金価格の決定要因
2011年9月に1920ドル/ozの高値を記録した金価格が2013年6月と12月に1180ドル/oz台にまで下落した。下落率は約4割に達する。さかのぼって2003年4月の319ドル/ozを基準とすれば、2011年9月の1920ドル/ozは6倍の水準への大暴騰である。ドル表示の金価格は裏を返せば、ドルの価値の変動を示す。金=ゴールドこそ価値の基準であり、金価格の暴騰はドル価値の暴落であり、金価格下落はドル価値の持ち直しである。
近年では、このファンダメンタルズによる金価格変動を収益機会=投資機会と捉えて、投資資金が金市場に流入している。その投資資金が短期に大きく変動して動く投機マネー的色彩を強めれば、金市場そのものが強い投機性を示すことになる。
二つのチャートを示す。米国10年国債利回りと金価格の過去5年間の推移である。両者の間に負の相関関係を見出すことができる。金価格は米国長期金利低下局面で上昇し、米国長期金利上昇局面で下落する傾向が観察されるのである。


カギを握る米国金融政策
米国10年国債利回りの変動が示しているのは、基本的には米国金融政策の方向である。米国の金融政策当局であるFRBが金融緩和政策を局面で米国の長期金利は低下傾向を示す。逆にFRBが金融緩和政策を縮小する、あるいは、金融引締め政策を実行する局面で長期金利は上昇する。そして、このなかで金価格は米長期金利低下下で上昇し、米長期金利上昇下で下落する傾向を示す。
つまり、米国金融緩和政策強化の局面で金価格は上昇し、米国金融緩和縮小、あるいは金融引締め政策実施の局面で金価格が下落することになるわけだ。
日本円からの投資を考える際には、ドルベースの金価格に加えて、円ドルレート変動を考慮する必要が出てくる。その円ドルレート変動が、米国長期金利変動と密接な関係を有していることは興味深い。
別の二つのチャートをご覧いただきたい。こちらは、米国10年国債利回りと円ドルレートの過去10年間の推移を示したものだ。チャートから読み取れることは、米長期金利が低下する局面でドルが下落し、米長期金利が上昇する局面でドルが上昇するという関係である。


踊り場に差しかかる米金利・ドル・金価格
米国で金融緩和政策が強化される局面ではドルベースの金価格が上昇するがドルは対円で下落しやすい。円ベースでの金価格上昇は抑制される。逆に米国で金融緩和縮小、あるいは金融引締め政策が取られる局面でドルベース金価格は下落するが、この局面ではドルが対円で上昇しやすくなり、円ベースの金価格下落は緩和される。
こうした一般的な関係を念頭に入れておくことは有用だ。金と為替の取引を組み合わせることにより、投資のリスクテイクの度合いを強めることも緩和することも可能になるからだ。
いずれにせよ、重要なカギを握るのは米国の金融政策である。FRB議長にイエレン女史が就任して、金融政策の新たな展開を示し始めている。イエレン女史は議会証言でも、さまざまな角度からの分析、判断を示すから、その発言が示唆する具体的政策のイメージを掴むことは容易ではない。
逆に言えば、イエレン女史は金融政策の一挙手一投足を金融市場に読み切られることを回避することに成功しているとも言える。イエレン女史が示している基本方針は、慎重な姿勢で金融緩和政策を縮小してゆくというもので、この方針提示を受けて、金融市場では、一種の「凪」の状況が生み出されている。
米国経済の基調が強まればドル高・金価格下落の可能性
米国の金融市場変動を読む際に、最重要の経済指標はとなっているのが毎月初めに発表される雇用統計である。雇用者数の増加、完全失業率、時間当たり賃金の変化などが示される。この統計が経済の基調の強まりを示せば、金融緩和縮小のペースアップが予想されることになり、逆に経済の基調の弱まりが示されれば、金融超緩和の長期化が予想されることになる。
月次統計の内容を事前に特定することは不可能である。統計内容を分析してFRBの次の一手を予想してゆくほかはない。4月は4日の金曜日に3月統計が発表される。まずは、この統計に注目するしかない。
ただし、前掲の米国長期金利の長期変動を見る限りにおいては、大きなトレンドとしては、米長期金利は上昇の波動のなかに位置しているように見える。2012年7月に米長期金利は低下から上昇に長期の波動を転換したが、この波動が終了したとは、現段階では判断できないからだ。
当面は踊り場が持続するのかも知れないが、踊り場を経て次に進む方向は、現時点では金利の上昇、金融緩和の縮小の方向になる公算の方が高いように見える。
市場参加者は、それぞれが、独自の判断で、独自の見通しを念頭に置くべきであるが、より重要なことは、金融市場変動のメカニズム、プロセスを正確に頭に入れておくことである。その基本が頭に入っていれば、刻々と変わる状況に対応して次の市場変動の予想を立ててゆくことができることになる。

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2014/04/01(第13回)
底値を模索する金価格
金価格の決定要因
2011年9月に1920ドル/ozの高値を記録した金価格が2013年6月と12月に1180ドル/oz台にまで下落した。下落率は約4割に達する。さかのぼって2003年4月の319ドル/ozを基準とすれば、2011年9月の1920ドル/ozは6倍の水準への大暴騰である。ドル表示の金価格は裏を返せば、ドルの価値の変動を示す。金=ゴールドこそ価値の基準であり、金価格の暴騰はドル価値の暴落であり、金価格下落はドル価値の持ち直しである。
近年では、このファンダメンタルズによる金価格変動を収益機会=投資機会と捉えて、投資資金が金市場に流入している。その投資資金が短期に大きく変動して動く投機マネー的色彩を強めれば、金市場そのものが強い投機性を示すことになる。
二つのチャートを示す。米国10年国債利回りと金価格の過去5年間の推移である。両者の間に負の相関関係を見出すことができる。金価格は米国長期金利低下局面で上昇し、米国長期金利上昇局面で下落する傾向が観察されるのである。


カギを握る米国金融政策
米国10年国債利回りの変動が示しているのは、基本的には米国金融政策の方向である。米国の金融政策当局であるFRBが金融緩和政策を局面で米国の長期金利は低下傾向を示す。逆にFRBが金融緩和政策を縮小する、あるいは、金融引締め政策を実行する局面で長期金利は上昇する。そして、このなかで金価格は米長期金利低下下で上昇し、米長期金利上昇下で下落する傾向を示す。
つまり、米国金融緩和政策強化の局面で金価格は上昇し、米国金融緩和縮小、あるいは金融引締め政策実施の局面で金価格が下落することになるわけだ。
日本円からの投資を考える際には、ドルベースの金価格に加えて、円ドルレート変動を考慮する必要が出てくる。その円ドルレート変動が、米国長期金利変動と密接な関係を有していることは興味深い。
別の二つのチャートをご覧いただきたい。こちらは、米国10年国債利回りと円ドルレートの過去10年間の推移を示したものだ。チャートから読み取れることは、米長期金利が低下する局面でドルが下落し、米長期金利が上昇する局面でドルが上昇するという関係である。


踊り場に差しかかる米金利・ドル・金価格
米国で金融緩和政策が強化される局面ではドルベースの金価格が上昇するがドルは対円で下落しやすい。円ベースでの金価格上昇は抑制される。逆に米国で金融緩和縮小、あるいは金融引締め政策が取られる局面でドルベース金価格は下落するが、この局面ではドルが対円で上昇しやすくなり、円ベースの金価格下落は緩和される。
こうした一般的な関係を念頭に入れておくことは有用だ。金と為替の取引を組み合わせることにより、投資のリスクテイクの度合いを強めることも緩和することも可能になるからだ。
いずれにせよ、重要なカギを握るのは米国の金融政策である。FRB議長にイエレン女史が就任して、金融政策の新たな展開を示し始めている。イエレン女史は議会証言でも、さまざまな角度からの分析、判断を示すから、その発言が示唆する具体的政策のイメージを掴むことは容易ではない。
逆に言えば、イエレン女史は金融政策の一挙手一投足を金融市場に読み切られることを回避することに成功しているとも言える。イエレン女史が示している基本方針は、慎重な姿勢で金融緩和政策を縮小してゆくというもので、この方針提示を受けて、金融市場では、一種の「凪」の状況が生み出されている。
米国経済の基調が強まればドル高・金価格下落の可能性
米国の金融市場変動を読む際に、最重要の経済指標はとなっているのが毎月初めに発表される雇用統計である。雇用者数の増加、完全失業率、時間当たり賃金の変化などが示される。この統計が経済の基調の強まりを示せば、金融緩和縮小のペースアップが予想されることになり、逆に経済の基調の弱まりが示されれば、金融超緩和の長期化が予想されることになる。
月次統計の内容を事前に特定することは不可能である。統計内容を分析してFRBの次の一手を予想してゆくほかはない。4月は4日の金曜日に3月統計が発表される。まずは、この統計に注目するしかない。
ただし、前掲の米国長期金利の長期変動を見る限りにおいては、大きなトレンドとしては、米長期金利は上昇の波動のなかに位置しているように見える。2012年7月に米長期金利は低下から上昇に長期の波動を転換したが、この波動が終了したとは、現段階では判断できないからだ。
当面は踊り場が持続するのかも知れないが、踊り場を経て次に進む方向は、現時点では金利の上昇、金融緩和の縮小の方向になる公算の方が高いように見える。
市場参加者は、それぞれが、独自の判断で、独自の見通しを念頭に置くべきであるが、より重要なことは、金融市場変動のメカニズム、プロセスを正確に頭に入れておくことである。その基本が頭に入っていれば、刻々と変わる状況に対応して次の市場変動の予想を立ててゆくことができることになる。

■植草一秀氏が登壇!
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植草一秀氏『2014年度三大リスク「SFCの壁」を読み解く』
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■植草一秀氏のブログ『知られざる真実』
マスコミの伝えない政治・社会・株式の真実・真相・深層を植草一秀が斬る
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