ゴールドの基礎知識その7 「貴金属の投資家Nymex/Comexポジション」/現在のマーケット分析
- 2014/10/01
- 11:03
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2014/10/01(第8回)
ゴールドの基礎知識その7 「貴金属の投資家Nymex/Comexポジション」/現在のマーケット分析
もはや9月も終わりでめっきり涼しくなってきました。このごろは朝走っていても金木犀の香りがとてもすがすがしいです。マーケットは「ドル高」がすべてを牛耳っていますが、それがいつまで続くか、が焦点ですね。今回は先物市場の投資家のポジションの観点から基礎知識と、現在のマーケットの分析の両方をしてみましょう。
毎週金曜日のマーケットの引け後(日本時間の土曜日朝5時)にCFTC(US Commodity Futures Trading Commission:米商品先物取引委員会)が全米の商品および金融先物取引のポジションの内容を発表します。その週の火曜日のCOB(Close of Business)時点での数字です。このレポートのことをCOT( The Commitments of Traders) レポートと呼びます。その数字を元にわかりやすく加工し、ETFのポジションも足したのが下の表です。

詳しく説明してみましょう。Comexのゴールドの投資家ポジションはロングが561トン、それに対してショートが333.5トン。ロングは前週から8.8トン減少して、ショートは29.5トン増加しています。またネットの投資家ポジションは227.5トンのロングこれは前週から38.3トン(ロング8.8トンの減少とショート25.9トンの増加の総和)の減少となっています。この投資家ポジションの総建て玉(Open Interest)に占める割合が11%でこれはこれは前週から2.2%の減少です。過去5年間の割合の平均は23.8%、過去1年間の平均は17.2%であり、そこから考えると現在の11%というのは小さな割合になっています。これはショートとロングが拮抗してきており、そのバランスが小さくなっていること、投資家のインタレスト自体が減少していることなどが考えられます。
シルバーは8242トンのロングに対してショートが7439トンとショートが大きく膨らんでいるように見えますが、実際のところはロングもショートも減少しており、中でもロングが598トンの減少、ショートは130トンの減少となっています。その結果、総取組高における投資家のロングの割合はわずか2.2%と、投資家がシルバーから離散していくような動きとなっています。5年の平均では15.4%、過去1年でも9.8%くらいはあったので、2.2%というのはあまりにも減少しすぎと考えられます。何かきっかけがあったときに投資家が入ってくる潜在的なスペースが大きくあると考えることができます。
一方、プラチナの投資家ロングポジションは43.1%、パラジウムにおいては60.8%と総取組高における投資家のポジションはまだまだ大きいものです。ただ過去5年の平均をみてみるとプラチナは54.1%、パラジウムは50.7%と普段から50%を超えるレベルであるので、パラジウムはまだ投資家の抱えるポジションが大きいと考えられますが、プラチナに関してみると、もはやポジションは普段よりも小さくなっているということがいえます。内容をみるとロングの減少とショートの増加がちょうど同じ3.2トンくらいづつです。パラジウムもやはりロングが減少してショートが増えています。パラジウムに関しては投資家がまだまだロングでポジションを持っているという気がします。彼らが今後耐え切れず売ってくるのか、それとも長期的視野からパラジウムは買いで続行と思っているのでしょうか。

以上はすべてComex/Nymexのポジションの話ですが、Tocomに目を向けてみると現在、プラチナの取組高が2007年8月以来の高水準で高止まりしています。これは個人投資家の買いがプラチナに集まっているためです。一時ゴールドをわずかながらに上回る建て玉となりました。これは私の記憶の中でも過去ありえなかったことです。9月末現在約10万枚の建て玉があります。プラチナの証拠金が安かったこと、ストーリーが作りやすいこと(南アのストライキやロシアウクライナの緊張からくる供給不安など)、そして円建てではゴールドがほとんど動かなくなったことなどがプラチナに買いが集まった原因だと思います。上でみたように、Nymexではある程度のロングからの売りが見られていますが、Tocomからはずっとそれが見られません。下がってきてもおそらくは限月間スプレッド(そもそものロングに対して新しくできた月に売りを持ってヘッジすること)で売りを立てるなどで余計に建て玉が増えているような気がします。この大きな建て玉が逆に内部要因として相場の頭を抑えることになりはしないか、少し心配です。
(Tocom PT 建て玉、価格と出来高)

以上
Bruce池水
池水氏へのご質問はこちらから
【筆者プロフィール】
池水雄一氏(貴金属アナリスト) これまで一貫して貴金属トレーディングに従事。著書にワールドワイドな貴金属市場の仕組みや商社の活動などを平易に解説した「ゴールドディーリングのすべて」があり、2010年11月にはその続編「THE GOLD ゴールドのすべて」を上梓。近著にはじめての人でもこれで安心!「金投資の新しい教科書」がある。 セミナーやメディア出演など大活躍の人気講師でもある。セントラル商事講演会に定期的に登壇中。
本コラムに記載された意見や展望などは、個人的な見解に基づく情報であり、本コラムにより被った損害についても、当社は一切の責任を負いかねますことをご了承願います。お取引の最終判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します。セントラル商事株式会社
当コラムの池水雄一氏が登壇!
秋季経済講演会
『2015年経済・投資展望 株&ゴールド』


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2014/10/01(第8回)
ゴールドの基礎知識その7 「貴金属の投資家Nymex/Comexポジション」/現在のマーケット分析
もはや9月も終わりでめっきり涼しくなってきました。このごろは朝走っていても金木犀の香りがとてもすがすがしいです。マーケットは「ドル高」がすべてを牛耳っていますが、それがいつまで続くか、が焦点ですね。今回は先物市場の投資家のポジションの観点から基礎知識と、現在のマーケットの分析の両方をしてみましょう。
毎週金曜日のマーケットの引け後(日本時間の土曜日朝5時)にCFTC(US Commodity Futures Trading Commission:米商品先物取引委員会)が全米の商品および金融先物取引のポジションの内容を発表します。その週の火曜日のCOB(Close of Business)時点での数字です。このレポートのことをCOT( The Commitments of Traders) レポートと呼びます。その数字を元にわかりやすく加工し、ETFのポジションも足したのが下の表です。

詳しく説明してみましょう。Comexのゴールドの投資家ポジションはロングが561トン、それに対してショートが333.5トン。ロングは前週から8.8トン減少して、ショートは29.5トン増加しています。またネットの投資家ポジションは227.5トンのロングこれは前週から38.3トン(ロング8.8トンの減少とショート25.9トンの増加の総和)の減少となっています。この投資家ポジションの総建て玉(Open Interest)に占める割合が11%でこれはこれは前週から2.2%の減少です。過去5年間の割合の平均は23.8%、過去1年間の平均は17.2%であり、そこから考えると現在の11%というのは小さな割合になっています。これはショートとロングが拮抗してきており、そのバランスが小さくなっていること、投資家のインタレスト自体が減少していることなどが考えられます。
シルバーは8242トンのロングに対してショートが7439トンとショートが大きく膨らんでいるように見えますが、実際のところはロングもショートも減少しており、中でもロングが598トンの減少、ショートは130トンの減少となっています。その結果、総取組高における投資家のロングの割合はわずか2.2%と、投資家がシルバーから離散していくような動きとなっています。5年の平均では15.4%、過去1年でも9.8%くらいはあったので、2.2%というのはあまりにも減少しすぎと考えられます。何かきっかけがあったときに投資家が入ってくる潜在的なスペースが大きくあると考えることができます。
一方、プラチナの投資家ロングポジションは43.1%、パラジウムにおいては60.8%と総取組高における投資家のポジションはまだまだ大きいものです。ただ過去5年の平均をみてみるとプラチナは54.1%、パラジウムは50.7%と普段から50%を超えるレベルであるので、パラジウムはまだ投資家の抱えるポジションが大きいと考えられますが、プラチナに関してみると、もはやポジションは普段よりも小さくなっているということがいえます。内容をみるとロングの減少とショートの増加がちょうど同じ3.2トンくらいづつです。パラジウムもやはりロングが減少してショートが増えています。パラジウムに関しては投資家がまだまだロングでポジションを持っているという気がします。彼らが今後耐え切れず売ってくるのか、それとも長期的視野からパラジウムは買いで続行と思っているのでしょうか。

以上はすべてComex/Nymexのポジションの話ですが、Tocomに目を向けてみると現在、プラチナの取組高が2007年8月以来の高水準で高止まりしています。これは個人投資家の買いがプラチナに集まっているためです。一時ゴールドをわずかながらに上回る建て玉となりました。これは私の記憶の中でも過去ありえなかったことです。9月末現在約10万枚の建て玉があります。プラチナの証拠金が安かったこと、ストーリーが作りやすいこと(南アのストライキやロシアウクライナの緊張からくる供給不安など)、そして円建てではゴールドがほとんど動かなくなったことなどがプラチナに買いが集まった原因だと思います。上でみたように、Nymexではある程度のロングからの売りが見られていますが、Tocomからはずっとそれが見られません。下がってきてもおそらくは限月間スプレッド(そもそものロングに対して新しくできた月に売りを持ってヘッジすること)で売りを立てるなどで余計に建て玉が増えているような気がします。この大きな建て玉が逆に内部要因として相場の頭を抑えることになりはしないか、少し心配です。
(Tocom PT 建て玉、価格と出来高)

以上
Bruce池水
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【筆者プロフィール】
池水雄一氏(貴金属アナリスト) これまで一貫して貴金属トレーディングに従事。著書にワールドワイドな貴金属市場の仕組みや商社の活動などを平易に解説した「ゴールドディーリングのすべて」があり、2010年11月にはその続編「THE GOLD ゴールドのすべて」を上梓。近著にはじめての人でもこれで安心!「金投資の新しい教科書」がある。 セミナーやメディア出演など大活躍の人気講師でもある。セントラル商事講演会に定期的に登壇中。
本コラムに記載された意見や展望などは、個人的な見解に基づく情報であり、本コラムにより被った損害についても、当社は一切の責任を負いかねますことをご了承願います。お取引の最終判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します。セントラル商事株式会社
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