原油相場見通し~短期的には急落する公算強い
- 2018/01/22
- 10:47
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Vol.0020
原油相場見通し~短期的には急落する公算強い
小針秀夫(トーキョートレーダーズタイムズ社代表取締役)
<index>
・WTI原油が上昇を強め3年1カ月ぶり高値
・OPEC協調減産や中東の地政学的リスクで上昇
・米原油在庫の大幅減少がここにきてクローズアップ
・ベネズエラの大幅減産も上昇要因として注目されている
・CFTCの買い越しが史上最大の70万枚に達し手仕舞いから急落の見込み
国際指標のWTI原油は1月16日に一時64.89ドルまで上昇を強め3年1カ月ぶり高値をつけた。上昇の起点である昨年6月の安値42.05ドルから22.84ドル高、上昇率は54%に達した。
原油価格が急速に上昇している原因は、マクロ的な要因、原油の独自要因など複合的なものによるものだ。マクロ的には鉄鉱石や銅、亜鉛、アルミなど非鉄金属の上昇にみられるような産業素材の上昇があり、さらにその背景には世界的な株高が実態経済も底上げしてきたことで素材商品やエネルギーの需要が増大していることが挙げられる。
長期的には、コモディティ全体の上昇がコストプッシュ・インフレを呼び込み、それがまた原油を始めとした商品相場の一段の上昇につながる可能性がある。
原油マーケットの材料としても強材料が目立っている。そもそも原油相場が上昇に転じたのは、売られすぎによる自律的な動きによるものだが、OPECと非加盟国との協調減産が合意し、延長されたことが需給に対する引き締まり感を誘って相場は一段上げに至ったといえる。
加えて、サウジアラビアを中心とした中東の地政学的リスクの広がりが原油の供給に対する不安を与えていることも軽視できない。またここにきて特に材料視されている点が、米国の原油在庫の減少とベネズエラの大幅減産である。
EIA(Energy Information Administration )が毎週発表している在庫統計によると、最新1月12日時点で4億1265万4000バレルとなっており、下段の棒グラフが示すとおり昨年3月のピーク時からは1億2200万超(23%)の減少となっている。
この米原油在庫の減少の背景には、シェールオイルを採掘するリグ稼働数(掘削装置)の減少がある。ベーカー・ヒューズ社がまとめるこのリグ稼働数は、1月13日時点747基となり昨年第4四半期以降は740~750基のレンジで推移しており、明らかに頭打ちの状態である。
最近までシェールオイルは、稼働前の油井(Drilled but Uncompleted Wells)が数千基もあり、原油価格が上昇すると簡単に増産することが可能と考えられていた。しかし、1本のシェールオイルの油井の寿命は短く、採掘後2~3年でピークとなりその後は急速に生産量は減ることから、長期間にわたり増産することは難しいのが現状である。また抗井を増やすには高いコストの鉱区開発が必要不可避であることも指摘されている。
世界最大の原油埋蔵量を誇るのは、サウジアラビアでもなくロシアでもなく実はベネズエラである。推定埋蔵量は3000億バレルもありサウジを凌駕している。
しかし最近の同国の産油量が日を追うにつれ大幅減産となっている。ベネズエラは破綻が懸念されるほど経済状態が深刻化しており、通貨過剰供給が加わり昨年のインフレ率が2600%と異常事態に陥っている。
石油の採掘施設が老朽化しており、増産できないどころかこれまで生産水準を維持することも難しい状況に陥っている。昨年の年間生産量は30年ぶりの低水準に落ち込んだだけでなく、特に昨年4月から急速に減産の傾向を強めている。最新の今年1月時点の産油量は175万バレルであり、直近6カ月で25%の大幅な落ち込みとなっている。
ただし短期的にWTI原油は急落する公算が強い。ファンドの買い越しがあまりに膨れ上がっているためだ。近い将来、既存買い方の手じまい売りが先行することで、相場は大きく右肩下がりの値動きとなると考えたほうがよさそうだ。
なお1月16日時点のファンドの建玉は買いが85万4090枚、売りが14万6303枚でネットの買い越しは初の70万枚超えとなって70万7787枚となっている。これだけ極端に買いで偏っていることが歪となり、内部要因からマーケットが顕著に値崩れすることは避けられそうにない。
買い越しの適正水準がどの程度か判断に難しいものの、今の状態が続いた場合新規の買いが入りにくくなっていることは間違いなく、足元の水準から相場が一段と上昇するにも内部的な調整が必要な場面である。





本コラムは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的として提供するものではありません。当コラムの情報は、正確を期しておりますが、その内容等を保証するものではありません。また、本コラムに記載された意見や展望などは、個人的な見解に基づく情報であり、本コラムにより被った損害についても、当社は一切の責任を負いかねますことをご了承願います。お取引の最終判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します。
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原油相場見通し~短期的には急落する公算強い
小針秀夫(トーキョートレーダーズタイムズ社代表取締役)
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・WTI原油が上昇を強め3年1カ月ぶり高値
・OPEC協調減産や中東の地政学的リスクで上昇
・米原油在庫の大幅減少がここにきてクローズアップ
・ベネズエラの大幅減産も上昇要因として注目されている
・CFTCの買い越しが史上最大の70万枚に達し手仕舞いから急落の見込み
WTI原油が上昇を強め3年1カ月ぶり高値
国際指標のWTI原油は1月16日に一時64.89ドルまで上昇を強め3年1カ月ぶり高値をつけた。上昇の起点である昨年6月の安値42.05ドルから22.84ドル高、上昇率は54%に達した。
原油価格が急速に上昇している原因は、マクロ的な要因、原油の独自要因など複合的なものによるものだ。マクロ的には鉄鉱石や銅、亜鉛、アルミなど非鉄金属の上昇にみられるような産業素材の上昇があり、さらにその背景には世界的な株高が実態経済も底上げしてきたことで素材商品やエネルギーの需要が増大していることが挙げられる。
長期的には、コモディティ全体の上昇がコストプッシュ・インフレを呼び込み、それがまた原油を始めとした商品相場の一段の上昇につながる可能性がある。
OPEC協調減産や中東の地政学的リスクで上昇
原油マーケットの材料としても強材料が目立っている。そもそも原油相場が上昇に転じたのは、売られすぎによる自律的な動きによるものだが、OPECと非加盟国との協調減産が合意し、延長されたことが需給に対する引き締まり感を誘って相場は一段上げに至ったといえる。
加えて、サウジアラビアを中心とした中東の地政学的リスクの広がりが原油の供給に対する不安を与えていることも軽視できない。またここにきて特に材料視されている点が、米国の原油在庫の減少とベネズエラの大幅減産である。
米原油在庫の大幅減少がここにきてクローズアップ
EIA(Energy Information Administration )が毎週発表している在庫統計によると、最新1月12日時点で4億1265万4000バレルとなっており、下段の棒グラフが示すとおり昨年3月のピーク時からは1億2200万超(23%)の減少となっている。
この米原油在庫の減少の背景には、シェールオイルを採掘するリグ稼働数(掘削装置)の減少がある。ベーカー・ヒューズ社がまとめるこのリグ稼働数は、1月13日時点747基となり昨年第4四半期以降は740~750基のレンジで推移しており、明らかに頭打ちの状態である。
最近までシェールオイルは、稼働前の油井(Drilled but Uncompleted Wells)が数千基もあり、原油価格が上昇すると簡単に増産することが可能と考えられていた。しかし、1本のシェールオイルの油井の寿命は短く、採掘後2~3年でピークとなりその後は急速に生産量は減ることから、長期間にわたり増産することは難しいのが現状である。また抗井を増やすには高いコストの鉱区開発が必要不可避であることも指摘されている。
ベネズエラの大幅減産も上昇要因として注目されている
世界最大の原油埋蔵量を誇るのは、サウジアラビアでもなくロシアでもなく実はベネズエラである。推定埋蔵量は3000億バレルもありサウジを凌駕している。
しかし最近の同国の産油量が日を追うにつれ大幅減産となっている。ベネズエラは破綻が懸念されるほど経済状態が深刻化しており、通貨過剰供給が加わり昨年のインフレ率が2600%と異常事態に陥っている。
石油の採掘施設が老朽化しており、増産できないどころかこれまで生産水準を維持することも難しい状況に陥っている。昨年の年間生産量は30年ぶりの低水準に落ち込んだだけでなく、特に昨年4月から急速に減産の傾向を強めている。最新の今年1月時点の産油量は175万バレルであり、直近6カ月で25%の大幅な落ち込みとなっている。
CFTCの買い越しが史上最大の70万枚に達し手仕舞いから急落の見込み
ただし短期的にWTI原油は急落する公算が強い。ファンドの買い越しがあまりに膨れ上がっているためだ。近い将来、既存買い方の手じまい売りが先行することで、相場は大きく右肩下がりの値動きとなると考えたほうがよさそうだ。
なお1月16日時点のファンドの建玉は買いが85万4090枚、売りが14万6303枚でネットの買い越しは初の70万枚超えとなって70万7787枚となっている。これだけ極端に買いで偏っていることが歪となり、内部要因からマーケットが顕著に値崩れすることは避けられそうにない。
買い越しの適正水準がどの程度か判断に難しいものの、今の状態が続いた場合新規の買いが入りにくくなっていることは間違いなく、足元の水準から相場が一段と上昇するにも内部的な調整が必要な場面である。






本コラムは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的として提供するものではありません。当コラムの情報は、正確を期しておりますが、その内容等を保証するものではありません。また、本コラムに記載された意見や展望などは、個人的な見解に基づく情報であり、本コラムにより被った損害についても、当社は一切の責任を負いかねますことをご了承願います。お取引の最終判断はお客様ご自身でなさるようお願い致します。
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