市場に織り込まれていない真実を探る
- 2014/02/17
- 10:17
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2014/02/17(第10回)
市場に織り込まれていない真実を探る
下落した年初来の株価
本コラムでは2014年初来の内外株式市場動向に警戒を要する見通しを示してきたが、実際に年初来、株価は調整色を強めている。日経平均株価は昨年の大納会で16,291円の高値で引けた。安倍首相は「アベノミクスは来年も買い」だと気勢を上げた。強気一色に包まれた年末だったが、よく似た光景が1989年末にも存在した。
日経平均7万円などという威勢のよい声も聞かれたのが1990年の正月だったが、ここから株価大暴落=バブル崩壊が始まった。驕れる人は久しからず、盛者必衰のことわりは、太古の昔から世の常なのである。
89年末のバブルピークでは日本株価は明らかに割高だった。高くなり過ぎた株価が下落するのは当たり前のことだ。株価暴落には必然の側面が強かった。株式の価値の源泉は、基本的に企業が生み出す利益にある。予想される利益水準と比較して株価が高すぎれば下落するのは当たり前なのである。
ただ、バブルの時代の株価評価には、「利益」以外に「資産」の側面が強く影響した。企業が保有する不動産などの価格が暴騰し、企業価値が膨張したため、株価が資産の側面から押し上げられた側面もあった。
バブルのピークの株価状況と現在の状況はまったく異なる。日本株価が割高である根拠はほとんど存在しない。バブル崩壊前夜と同列に論じることは間違いだが、それでも日本株式市場の先行きには警戒が求められる。
割高ではないのに下落する株価
2014年3月期の上場企業経常利益は大幅増益が見込まれている。この利益水準を基準にすると、日本の株価は現時点でも著しく割安である。株価の水準評価を行う基準は株式の益利回りである。債券の利回りを基準に適正な株式利回りを考える。これが、適正株価を判定する基礎作業だ。
日本の債券利回りの基準を1%と仮置きし、株式益利回りの基準を4%とすると、株式のPER(株価収益率)は25倍になる。株式は危険資産であるため、投資家が求める期待収益率は債券よりも高いと考えられるのだ。
細かな説明は省略するが、日本株価のPERが25倍とすると、日経平均株価は23500円程度にまで上昇してもおかしくない。この意味で日本株価は依然として著しく割安なのである。バブルのピークとはまったく状況が違う。
それにもかかわらず、筆者は昨年来、本年年初以降の株価に下落のリスクが強いことを警告してきた。その理由は、日本の経済政策が2014年の日本経済を著しく悪化させる可能性が高いことにある。また、米独等の海外株価が調整のタイミングに差しかかる可能性が高いことも影響する。
株価は割安であっても、株価を押し上げる方向に経済や政策が動かぬ場合には、割安修正が進まず、反落しやすいのである。
認識されていない2014年の政策逆噴射
筆者は昨年7月の会員制レポートに、日本株価が2005~2007年と似た軌跡を描く可能性を指摘した。この期間に日本株価が上昇したが、2006年半ばに調整局面があった。日銀のゼロ金利政策解除などの要因で、一時的に株価が調整局面を迎えたのである。しかし、その後に株価は持ち直し、2007年7月に高値をつけた。その後、2009年の7607円へと暴落を演じたが、その背景はサブプライム金融危機だった。

2012年11月以降、安倍政権誕生の見通しが強まり、2013年5月にかけて株価が急騰した。その後、円高進行、日本長期金利上昇の影響で株価は一時的調整を演じたが、昨年末にかけて高値を更新した。

そして、いま、下落傾向を示している。最大の日本国内要因は、安倍政権が史上空前の緊縮財政のブレーキを踏むことである。消費税増税等で9兆円も国民負担が増える。さらに、補正予算規模が7.5兆円も圧縮される。16.5兆円の猛ブレーキが踏み込まれるのだ。筆者はこれを恐怖の政策逆噴射と呼んでいるが、この影響を株式市場は読み込み始めているように思われる。
金価格の変動を規定する米国金融政策
もうひとつ、米国の金融政策の方向転換の影響は重大である。FRB議長にはイエレン女史が就任した。経済の洞察能力と市場への説明能力を兼ね備えた有為の人材であると思われるが、金融政策の方向が「緩和」から「引締め」の方向に転換する意味は重大である。
金価格はドルの価値を表示する「逆指数」でもある。金融「緩和」はドルの相対価値を引下げる施策であるが、金融「引締め」はドルの相対価値を高める施策である。米国の金融政策の方向が「緩和」から「引締め」の方向に転換することを映して、金価格が「上昇」から「下落」に転じたことは順当なのだ。
足下で、米国経済が猛烈な寒波の影響を受けている。経済指標はやや弱まり、金融「引締め」のペースは緩むかも知れない。この意味で目先は強弱感が交錯しやすいが、景気の再悪化懸念も重なって、NY株価は上値の重い展開を続けるのではないか。
ある見通しが周知の事実になったときには、その情報はすでに市場に織り込まれているものである。ところが、2014年の日本経済が悪化する可能性の高いことは、まだ多くの人々の認識するところになっていない。この見方が正しい場合には、日本経済悪化の可能性が今後の金融市場変動になお影響を与える可能性が高い。まだまだ市場の波乱に警戒が必要である。

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04/12植草氏が登壇!「消費税増税でどうなる日本経済!」

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2014/02/17(第10回)
市場に織り込まれていない真実を探る
下落した年初来の株価
本コラムでは2014年初来の内外株式市場動向に警戒を要する見通しを示してきたが、実際に年初来、株価は調整色を強めている。日経平均株価は昨年の大納会で16,291円の高値で引けた。安倍首相は「アベノミクスは来年も買い」だと気勢を上げた。強気一色に包まれた年末だったが、よく似た光景が1989年末にも存在した。
日経平均7万円などという威勢のよい声も聞かれたのが1990年の正月だったが、ここから株価大暴落=バブル崩壊が始まった。驕れる人は久しからず、盛者必衰のことわりは、太古の昔から世の常なのである。
89年末のバブルピークでは日本株価は明らかに割高だった。高くなり過ぎた株価が下落するのは当たり前のことだ。株価暴落には必然の側面が強かった。株式の価値の源泉は、基本的に企業が生み出す利益にある。予想される利益水準と比較して株価が高すぎれば下落するのは当たり前なのである。
ただ、バブルの時代の株価評価には、「利益」以外に「資産」の側面が強く影響した。企業が保有する不動産などの価格が暴騰し、企業価値が膨張したため、株価が資産の側面から押し上げられた側面もあった。
バブルのピークの株価状況と現在の状況はまったく異なる。日本株価が割高である根拠はほとんど存在しない。バブル崩壊前夜と同列に論じることは間違いだが、それでも日本株式市場の先行きには警戒が求められる。
割高ではないのに下落する株価
2014年3月期の上場企業経常利益は大幅増益が見込まれている。この利益水準を基準にすると、日本の株価は現時点でも著しく割安である。株価の水準評価を行う基準は株式の益利回りである。債券の利回りを基準に適正な株式利回りを考える。これが、適正株価を判定する基礎作業だ。
日本の債券利回りの基準を1%と仮置きし、株式益利回りの基準を4%とすると、株式のPER(株価収益率)は25倍になる。株式は危険資産であるため、投資家が求める期待収益率は債券よりも高いと考えられるのだ。
細かな説明は省略するが、日本株価のPERが25倍とすると、日経平均株価は23500円程度にまで上昇してもおかしくない。この意味で日本株価は依然として著しく割安なのである。バブルのピークとはまったく状況が違う。
それにもかかわらず、筆者は昨年来、本年年初以降の株価に下落のリスクが強いことを警告してきた。その理由は、日本の経済政策が2014年の日本経済を著しく悪化させる可能性が高いことにある。また、米独等の海外株価が調整のタイミングに差しかかる可能性が高いことも影響する。
株価は割安であっても、株価を押し上げる方向に経済や政策が動かぬ場合には、割安修正が進まず、反落しやすいのである。
認識されていない2014年の政策逆噴射
筆者は昨年7月の会員制レポートに、日本株価が2005~2007年と似た軌跡を描く可能性を指摘した。この期間に日本株価が上昇したが、2006年半ばに調整局面があった。日銀のゼロ金利政策解除などの要因で、一時的に株価が調整局面を迎えたのである。しかし、その後に株価は持ち直し、2007年7月に高値をつけた。その後、2009年の7607円へと暴落を演じたが、その背景はサブプライム金融危機だった。

2012年11月以降、安倍政権誕生の見通しが強まり、2013年5月にかけて株価が急騰した。その後、円高進行、日本長期金利上昇の影響で株価は一時的調整を演じたが、昨年末にかけて高値を更新した。

そして、いま、下落傾向を示している。最大の日本国内要因は、安倍政権が史上空前の緊縮財政のブレーキを踏むことである。消費税増税等で9兆円も国民負担が増える。さらに、補正予算規模が7.5兆円も圧縮される。16.5兆円の猛ブレーキが踏み込まれるのだ。筆者はこれを恐怖の政策逆噴射と呼んでいるが、この影響を株式市場は読み込み始めているように思われる。
金価格の変動を規定する米国金融政策
もうひとつ、米国の金融政策の方向転換の影響は重大である。FRB議長にはイエレン女史が就任した。経済の洞察能力と市場への説明能力を兼ね備えた有為の人材であると思われるが、金融政策の方向が「緩和」から「引締め」の方向に転換する意味は重大である。
金価格はドルの価値を表示する「逆指数」でもある。金融「緩和」はドルの相対価値を引下げる施策であるが、金融「引締め」はドルの相対価値を高める施策である。米国の金融政策の方向が「緩和」から「引締め」の方向に転換することを映して、金価格が「上昇」から「下落」に転じたことは順当なのだ。
足下で、米国経済が猛烈な寒波の影響を受けている。経済指標はやや弱まり、金融「引締め」のペースは緩むかも知れない。この意味で目先は強弱感が交錯しやすいが、景気の再悪化懸念も重なって、NY株価は上値の重い展開を続けるのではないか。
ある見通しが周知の事実になったときには、その情報はすでに市場に織り込まれているものである。ところが、2014年の日本経済が悪化する可能性の高いことは、まだ多くの人々の認識するところになっていない。この見方が正しい場合には、日本経済悪化の可能性が今後の金融市場変動になお影響を与える可能性が高い。まだまだ市場の波乱に警戒が必要である。

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